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【第10章】5 第1段切り(4) 「基本標識」と「主要な姿態」

 投稿者:*鬼薔薇  投稿日:2007年 3月31日(土)00時45分22秒
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  以上をふまえて、問題の第7章「帝国主義の五つの基本指標」とここ第10章での「独占の四つの主要な姿態」とを比較してみましょう。

●第7章「基本指標」----------------------------------------
(1) 生産と資本との集積が、経済生活で決定的な役割を演ずる独占をつくりだすほどに高い発展段階に達したこと、
(2) 銀行資本と産業資本が融合し、この「金融資本」を基礎にして金融寡頭制がつくりだされたこと、
(3) 商品の輸出とは異なる資本の輸出がとくに重要な意義を獲得していること、
(4) 資本の国際的独占団体が形成されて、世界を分割していること、
(5) 最大の資本主義列強による地球の領土的分割が完了していること、
                    〔岩p.145-6/国p.115-6/濤p.145〕

●第10章「独占の四つの主要姿態」-----------------------------
第一に、「独占は、きわめて高度の発展段階にある生産の集積から発生した。それは資本家の独占団体、すなわち、カルテル、シンジケート、トラストである。…二〇世紀の初めごろ、これらの団体は先進諸国で完全に勢力をしめるにいたった」(同)。【第1章】

第二に、「独占は、もっとも重要な原料資源…の占有をもたらした。もっとも重要な原料資源〔石炭と鉄〕の独占的支配は、大資本の権力をおそろしく増大させ、カルテル化された産業とカルテル化されていない産業とのあいだの矛盾を先鋭化させた」(岩p.199-200/国p.160/濤p.203)。【同】

第三に、「独占は銀行から発生した。銀行はひかえめな仲介的企業から金融資本の独占者に転化した。…現代ブルジョア社会の、例外なしにすべての経済機関と政治機関のうえに、従属関係の濃密な網をはりめぐらしている金融寡頭制――これこそが、この独占のもっともあざやかな現われである」(岩p.200/国p.160-61/濤p.203)。【第2、3章】

第四に、「独占は植民政策から発生した。金融資本は、『古くからの』植民政策の多数の動機に、さらに、原料資源のための、資本輸出のための、『勢力範囲』のための――すなわち有利な取引、利権、独占利潤、その他の範囲のための――最後に、経済的領土一般のための、闘争をつけくわえた。…世界が分割されてしまったときには、不可避的に、植民地の独占的領有の時代が、したがってまた、世界の分割と再分割のためのとくに尖鋭な闘争の時代が到来した」(岩p.200/国p.161/濤p.203-4)。【第4〜7章】
---------------------------------------------------------------

比べてみると、第7章の「基本指標」は先行する第1〜6章の叙述を包括的に扱っており、そこから次の「再定義」を導いたものでした。

「帝国主義とは独占体と金融資本との支配が形成されて、資本の輸出が顕著な意義を獲得し、国際トラストによる世界の分割がはじまり、最大の資本主義諸国による地球の全領土の分割が完了した、そういう発展段階の資本主義である」(岩p.146/国p.116/濤p.145)。

それに対し、ここ第10章の「主要姿態」はそうした包括的な特徴づけではなく、第1〜3章の原理的な規定に大きく比重を置いたものであることがわかります。

前にも整理を試みたように、第1章「集中・集積論」が「独占」原理の基本のキ、それを補強したのが第2、3章、第4〜6章はそれを基礎としたいわば各論、その全体を第7章で総括するという論述展開でございました。それを考え合わせれば、この第10章に列記された「主要姿態」は、もう一度「独占」の原理規定にさかのぼり、それを基礎に「帝国主義の歴史的地位」を導こうとするものであること、そのような論理展開に本章の独自な意味があるものと考えられると存じます。

さて、その「独占」を主題に据えた第1段切りは次のように結ばれます。

「独占資本主義が資本主義のあらゆる矛盾をどれほど先鋭化したかは、周知のところである。ここでは物価の騰貴とカルテルの圧迫とを指摘すれば十分である。矛盾のこの先鋭化は、世界金融資本の終局的勝利の時代のときからはじまった歴史的過渡期のもっとも強力な推進力である」(岩p.201/国p.161/濤p.204)。

なぜ物価騰貴とカルテルの圧迫が先鋭化する矛盾の代表指標なのか、“世界金融資本”とは、その終局的勝利とは何か? これらの逐語的な説明が先行章に十分なされていたかよくわからぬものが残りますが、ここで「歴史的過渡期」というのが資本主義から社会主義への過渡期として思い描かれていただろうことは、上の比較検討からもほぼ了解できるところでございましょう。

独占は競争の否定ですが、ほかならぬ自由競争の中から生れたというのが(前近代的独占と区別された)第1章の「近代独占」の規定でした。その近代独占は資本主義そのものですが、その資本主義的独占自身が、今度は資本主義の否定たる社会主義の物質的基礎を生み出す、という(「否定の否定」という『資本論』のレトリックに似た)ロジックスが、「帝国主義の歴史的地位」の論述を貫いているのではないか、と予想することができましょう。第1〜3章で繰り返される「社会化」のモメントがここにあらためて注視されるゆえんと存じます。

ここで関心を向けておきたいことは、第7章で定義し直した「帝国主義」の内容が「基本的な純経済的概念」に「限定されて」(岩p.146/国p.116/濤p.145)いたこと、「あとで見るように、……資本主義一般にたいする資本主義のこの段階の歴史的地位とか、あるいは労働運動の内部における二つの基本的傾向と帝国主義との関係とかを念頭におけば、帝国主義についてこれとは違った定義をすることができるし、またしなければならない」(前同)と、後段での別な定義を予告していたこと、そして、ここ第10章は、その“資本主義一般にたいする資本主義のこの段階の歴史的地位”を導くべき位置にあることでございます。

ではそれは、第7章が強調した純「経済的」概念とは「違った」(政治的あるいは社会的概念からする)別の定義なのか、それとも、これもまたあくまで「経済的概念」の範囲にあるものと考えるべき事柄なのか、そのあたりを念頭に置いて先へまいりましょう。

とりあえず以上で第1段切りの解読を締め括ることといたします。
第2段切りは、月があらたまってからそろそろと(笑)。
 

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