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「新しい帝国主義」像の理論的模索

 投稿者:*鬼薔薇  投稿日:2007年12月10日(月)15時58分57秒
  通報 編集済
  大分おサボりしておりますが、またそろそろと(笑)。

以前、大坂板で現代の「金融」問題に触れたTAMO2さんのご発言に対するコメントで次のように書きました。

>当読書室のテキスト『帝国主義論』について申しますと、第5章「資本家団体のあいだでの世界の分割」と第6章「列強のあいだでの世界の分割」という、相対的に独立したふたつの分析軸が交差するところにヒントを見出せようかと思います。
(煤払いを兼ねて(笑)  投稿日:2007年10月 3日(水))

この第5章−第6章問題については、ずっと以前の臨夏さんのご報告の際にもいくつか模索的なコメントを試みたところですが、このふたつの「分割」論の“相対的独立”という論点を正面から取り上げた文献に先日接し、ヒザポンの印象を受けました。

デヴィッド・ハーヴェイ『ニュー・インペリアリズム』 (本橋哲也訳、青木書店)

“領土の論理と資本の論理”(p.36)、→“「政治的・領土的権力論理」対「資本主義的権力論理」”(p.104)という二項構造は、前者が『帝国主義論』第6章、後者が第5章で描かれたふたつの「分割」の論理であること、申すまでもございません。

帝国主義の展開はこのふたつの論理の交差構造の変動で捉えることができそうに思います。1960年代中葉以後に露わになった大企業の「多国籍」化は、前者の論理に比重が移ったことを示し、さらに80年代中葉以後の「グローバル化」は、それが「金融」を軸に新たな局面へ入ったことを示して今日に至っているのではないかと。この新たな局面を原著者は「略奪による蓄積としての帝国主義」(p.180)として総括しております。であるなら、1世紀近く前の古典的著作が提出した「独占段階の資本主義」「腐敗しつつある資本主義」「死滅しつつある資本主義」という「帝国主義」の3つの根本規定、なかんづくその第三の根本規定とこの「略奪による蓄積」とは、どのように連関するのか。

ここで「国家」が問題となるはずでございます。原著者の専門は経済地理学とのこと。“『帝国主義論』を(「経済学」の書としてではなく)「国家論」として読む”という当読書室の初発の関心軸を辿るうえで刺激的な素材として読めようかと存じます。

それにしても翻訳のひどいこと(苦笑)。
訳者は経済学に疎いばかりか基本的な用語の素養さえ欠いているらしいこと、あえて原書と対照せずとも訳文そのものから容易に看て取れますが、アマゾンの読者評に立ち入ったコメントがございました。

「誤訳・不適訳が多すぎ?日本のハーヴェイ研究に汚点」---------------
「訳の出来栄えを見る限り、訳者は、日本のハーヴェイ研究の蓄積を踏まえて訳業に携わったとは思えない。フランス史について、19世紀にパリの都市改造をしたセーヌ県知事が「ハウスマン」とは噴飯もの(108頁)。経済学のタームでは、原著者が新古典派の「均衡」と地理学の「均等」概念を注意深く使い分けるのに対し、本訳書はごちゃごちゃだ(98頁など)。さらに訳書208頁の中国の経済開発を扱った箇所で、原文の「This presumes that this process does not spark a counter-revolution within China」の一文が訳出されていない。中国の「反革命」の可能性を述べると、何か不都合があるのか?
 他にも数々ある本書の誤訳・不適訳の責任を、訳者本橋氏一人にかぶせるのは酷かもしれない。「訳者あとがき」によれば、青木書店の担当者が、本訳書の出版を2004年米大統領選に間に合わせるよう「熱望」したという。時宜を得た出版が、読者の喜び、出版社のビジネスチャンスだとしても、拙速な仕上がりの本訳書は、日本のハーヴェイ研究に大きな汚点を残した」。

専門外の著作の翻訳に安易に手を出すのはそもそも職業的研究者のすることなのでしょうか。少なくとも本書を凡百のサヨク系「反グロ」本群と同列に置くような所業は、原著者の仕事に対する冒涜ともなりかねぬと存じます。版元はどういう意図でこのような門外漢に翻訳を依頼したのかしら。安いとはいえぬ出費を強いられた読者としてはいささかの不平不満を禁じ得ません。
 

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